今回は、株式会社バリュークリエイトの創業者で代表取締役の三冨正博と同社クリエイティブディレクターの岡部哲也が、レース用自動車部品の製造や医療機器の設計・製造などを手がけるタマチ工業株式会社代表取締役・米内淨氏を迎え、『見えない資産経営と未来歴史づくり』について語り合った。
しらけきっていた集団が途中から火の玉集団に
「未来塾」変化の首謀者は米内さんだった
岡部 | 米内さんが初めてウチの三冨と会ったのは、いつですか? |
米内 | 2012年4月ですね。城南信用金庫さんが、新たな試みとして「未来塾」を主催することになって、その初日に初めて三冨さんに会いました。 |
岡部 | 「未来塾」は、次世代経営者を育成する会としてスタートしたんですよね。 |
三冨 | その塾頭に僕が指名されて、始まったんです。でも、多くの人たちは、「その日だけ行けばいいんだろう」と思って参加したらしく、当日、いきなり全8回と知らされて、皆さん、こんなひどい話はないと思ったみたいですよ(笑)。 |
岡部 | つまり、皆さんのテンションはかなり低いものだったということですね。そんななかで始まった「未来塾」ですけれど、米内さんはどんな風に感じていましたか? |
米内 | 現会長で当時は社長だった太田邦博さんから「いずれはあなたに渡すよ」と言われていて、いろいろと考えている時期だったので、会社経営のヒントになるものを得ることができればいいなと思っていました。私も当時は、まさに次世代経営者で……。 |
三冨 | 初日は皆さん、かなりローギアな感じで、超アウェイな雰囲気。ただ、4、5回目くらいから雰囲気がガラッと変わってきて、第2期もやるべきだという意見が出てきたんです。その首謀者が米内さんだった。 |
米内 | 仲間はいましたよ。 |
岡部 | 「未来塾」に参加した当初のタマチ工業は、どうだったんですか? 米内さんから見て、何か課題みたいなものはありましたか? |
米内 | 2008年にリーマンショックがあって、お客様が発注を抑えるようになったりして、2011年頃から仕事が激減しました。その状態が少し改善してきたところで、「未来塾」のお話をいただいたんです。当時はとにかく主要顧客への依存度が高くて、他の仕事を集めようとしても身動きが取れなかった。自分たちに想像力がなかったんですね。流れに任せて、受け身的な営業しかしてこなかったという感じはありました。 |
岡部 | そんな危機感を感じていた米内さんが、「『未来塾』っていいかな」と思い始めたのはいつぐらいからですか? |
米内 | 私は初日からいいと思っていましたよ。 |
岡部 | 本当ですか? どのあたりがよかったのですか? |
米内 | 丸一日三冨さんのお話を聞いたり、皆さんのプレゼンを聞いたりしたのですが、懇親会のときに「1日眠くならなかったから、三冨さんはたいした人だと思いました」と言いました。 |
岡部 | 三冨さんはどう感じましたか。 |
三冨 | 勇んで行ったら、皆さんは全然やる気がなくて……。でも、やっていくうちに、少しずつ手応えを感じるようになってきたんです。とくに、夏にタマチ工業さんの西富士工場へみんなで行ったときの懇親会で、皆さんの気持ちがグッと変わったような気がしました。 |
米内 | きっかけづくりとして、皆さんをウチの西富士工場にお招きしたんです。 |
岡部 | もうリーダーシップを発揮されていたんですね。 |
三冨 | 米内さん、見せたがりだから(笑)。あとは会社訪問っていうのもあったね。 |
岡部 | 何ですか、それは? |
米内 | 人的資産の講義のなかで、自社の従業員を2軸マッピングするという宿題が出たんですけれど、私がまったく勘違いをしていて、新入社員は左上に置かなければいけないのに、入りたての子は何も知らないからということで左下に置いていたんです。それ見た三冨さんからすぐに電話がかかってきて、「すぐにタマチ工業さんに行きたいんだけど……」と。会社訪問第一回目は私(笑)。 |
※ 企業に対する共感は高いが、成果やキャリアが少ないので新入社員は左上に配置する。 |
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三冨 | 宿題としてメールを送ったら、すぐに返ってきたんです。僕が言ったことを真摯に受け止めてくれているのが分かったから、これは実際に会ったほうがいいと思い、「これから行く」と言ったんです。 |
岡部 | どんな話をしたんですか? |
米内 | 「2軸マッピングというのは、こういう考え方なんだけれど理解できる?」というような話でした。そして、いい機会だからということでウチの太田にも会ってもらい、「未来塾」で一緒になる前から取引先だった会社にも同行してもらったんです。 |
三冨 | そういうやりとりのなかで、お互いに馴染んでいったという感じでしたね。 |
岡部 | 三冨さんにとって1期生はどんな存在ですか。 |
三冨 | 最初はしらけきっていた集団が、途中からとてつもない火の玉みたいになっちゃって、「『未来塾』のワクワクの源泉はこの人たちだな」と思います。彼らが主人公。彼らが活躍する場としてやってくれているのはすごく有り難かったですね。 |
本記事は2019年12月に行った鼎談をまとめたものです