「見えない資産」経営と未来歴史づくり 「見えない資産」経営と未来歴史づくり
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その人ならではのリーダーシップが
会社の独自性を生む

岡部 ここからは、リーダーシップについてお話をうかがいたいと思います。
米内 自主勉強会で、「例えば工場だったら、毎週1回チェックすると、年に52回できるよ」と三冨さんから言われて、「これいいな」と思ってやるようになりました。そして、やっている内容を自主勉強会に参加している人たちに見ていただいたんです。すると、いろんな意見が出てきました。その意見を参考にしながら、チェックの内容に磨きをかけて有効なチェック項目をつくり、今は毎週チェックを行っています。もちろん負荷予測は工場から出てきますが、毎週月曜日に改善策を指示するようにしています。
岡部 それで何が変わりましたか?
米内 これをやりながら、自分も週に1回工場に行ってチェックをするようになったら、だいたいみんなが考えている稼働パーセンテージと私が考えているものが合うようになってきました。今はルーティンになっているので、「次は何を変えてやろうかな」と考えている最中です。
岡部 品質改善についてはいかがですか?
米内 工場の中では、自分たちはこれで良かろうと思ってやっていることも多く、それで最終的に不良品が出てしまって、苦境に陥ることもあります。でも、不良品を出さないように改善させる方法は、じつはいくつもあるんです。それを、工場の人たちにも考えてもらうけれど、我々はもう少しお客さま目線に立って改善点を見出していこうと思っています。今は、だいたい半日掛けて工場を回って、月に平均すると百数十件、品質改善点を書き出します。
岡部 すごいですね。では、三冨さんから見て、米内さんのリーダーシップはいかがですか?
三冨 8年間、少しずつ「見えない資産」経営を実践することで、馴染んできているのではないかと思います。例えば、重要度、緊急度にしても、以前は右下のことも自分でやっていたかもしれないけれど、その辺がずいぶん整理されてきた。人的資産のマッピングでも、以前は右下の人を右上に変えたいと思っていたのだけれど、今では右下の人は右下のままでいいと思うようになってきた。その代わり、その人の強みを引き出して、右下のままで会社に貢献できる人材にしていこうと考えるようになった。一方で、タマチ工業の文化や戦略に対して共感している人には、チャンスをいろいろ与えて、それをうまく束ねていくというやり方に変わってきているのではないかと思います。8年前はできていなかったものが、経験することで少しずつ手応えを感じるようになってきたような気がします。
その人ならではのリーダーシップが会社の独自性を生む | 「見えない資産」経営と未来歴史づくり その人ならではのリーダーシップが会社の独自性を生む | 「見えない資産」経営と未来歴史づくり
岡部 米内さんご自身は、どうですか?
米内 良くも悪くも経営に意見する社員はいます。中堅時代に分岐点があった社員が、さっき話した新聞ネタになった画期的新技術(左上の仕事)に飛びついてくれて、現在では人的資産マッピングでも右上です。いちいち指示しなくても自ら進んで広範囲で業務を動かしてくれるので、こちらが追いつくのに必死。そういう意味では、従業員の見方もずいぶん変わりましたね。
三冨 米内さんのやろうとしているリーダーシップが、ここにきて効果を表すようになってきたんじゃないかな。それで、米内さん自身も手応えを感じているし、自信を持てるようになってきたんだと思いますね。
岡部 米内さんのなかでも、経営者としてのテーマのひとつは、リーダーシップの発揮ということなんですか?
米内 そうですね。
三冨 一般的に、社長は緊急度も重要度も高い仕事をするのがリーダーシップの発揮だけれど、もう1個上の段階に行くと、たぶんそこは任せられる人がいて、自分は重要度は高いけれどさほど緊急度は高くないという仕事をするのがリーダーシップなのではないかと思うんです。あるいは人的資産のマップでも、右下の人を右上に変えようするのがリーダーシップの発揮だというところから、米内さんは右下はそのままでよくて、自分が変わることで右下にいる人を生かしていく方法もあると考えられるようになってきたのだと思います。リーダーシップの発揮の仕方が、より米内さんらしくなってきている。それは、世の中で言われているリーダーシップとはちょっと違うかもしれませんが、それが会社の独自性につながっているのではないかと思います。
岡部 三冨さんから見て、米内さんはどのような経営者に写っているのでしょうか?
三冨 素晴らしい経営者だと思います。
岡部 どういうところが素晴らしいんですか。素晴らしくなる人とならない人がいると思うのですが……。
三冨 素直なんですよね。素直さとアクションを起こす力がある点が素晴らしいと思います。

本記事は2019年12月に行った鼎談をまとめたものです

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